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– Tomo's World Trip in 2015 –

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ブラジル、ユバ農場での3日間

   

ブラジルの最後の週は、ユバ農場に行ってきました。
 
友人からユバ農場と呼ばれる所があることを聞き、急遽ブラジル滞在を延長して行く事に決めました。
旅行の日程を変えてまで行きたかったのは、ふたつの理由があったからです。
 
ひとつめは、ブラジルでの農業を、お手伝いをする中で知りたかったから、
もうひとつは、個人がお金を持たない共産主義的な生き方に興味を持ったから、
です。
 
***
 
サンパウロから深夜バスで10時間かけてユバ農場に到着すると、一瞬タイムスリップしたような感覚に陥りました。
なんだか、50年前の日本の田舎にいるみたい。
赤土と草が混ざり合う道の上を歩いて食堂に辿り着くと、古くなった木造の建物の中では、女性達が台所の周りで調理をしています。
 
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荷物を食堂においた後、まず農園を案内してくれたのは、幼稚園くらいの小さな女の子。
緑に囲まれた自然の中を、小さな女の子について歩いて行きます。
なんだか、となりのトトロのメイちゃんみたい。
 
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これはチョコレートの花なんだよー、といって彼女が差し出したのは、小さな紫色の花。鼻を近づけて香りを嗅いでみると、確かに花からチョコレートの香りがして驚きました。
 
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その後も、これは青汁の葉っぱ、これはニンジンの葉っぱなど、様々な種類の野菜や果物を教えてくれます。4歳の子が、こんなにも色々なことを知ってるなんて!
しかも、果実や葉っぱをむしりながら、「はい、おにいちゃん、これ美味しいよー」と言って食べさせてくれます。歩いてはかじり、歩いてはかじり。
 
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モノヘイヤの葉っぱ、美味しいねと言いながら次から次へともぐもぐ。
ネギを食べた時は、辛いねーと言いながら、お互いしかめっ面になりました。
 
鶏小屋や、陶器の焼き場なども案内してもらい、午前中の農場見学は終了。
案内してくれて、しかもお花をたくさんくれて有難う。
 
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11時を過ぎて合図の笛の音が鳴ると、今度はユバ農場に来ている旅行者と共に、お昼ご飯を頂きます。
これが、本当に心にしみる美味しさ。
お肉も野菜も、ここの農園で採れたもの。豚や鶏はここで締めて、野菜や果物は畑からとって、と全てが自給自足です。
久しぶりに、お味噌汁も食べれて、大満足。
 
食事
 
***
 
3日間を通して、短い時間ですが、農業のお手伝いをさせてもらいました。
この農場では、旅人は迎えると言う理念があり、旅行者は誰でも事前に連絡したら訪問することができます。しかも、宿泊費や食費など何も支払う必要がありません。
私も滞在中は、一切お財布を開きませんでした。
振り返ってみると、3日間、たった3日間という短い期間ですが、社会人になってからお金に触れずに過ごしたことはあったでしょうか?思い返してみましたが、まずなさそうです。普段の生活では、1日財布を家に忘れるだけでも、かなり不便に感じます。
 
何も支払わなくていい代わりに、農場の作業を手伝います。
オクラの実を積んだり、パックに詰めたり。
また、草刈りをしたり、木を引っこ抜いて斧で切ったり。
 
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農作業をあまりしたことがない私は、はじめは笑顔で作業できていたのですが、途中から正直きつくなってきました。
特に、レモンの木が病気になったということで、根っこから引っこ抜いて斧で切る仕事は大変でした。
土にまみれすぎて、服の汚れとか、途中からどうでも良くなってきます。
ブラジルの35℃を超える夏の炎天下の中、ふらふらになりながら、作業を続けました。
 
でも、実際のオクラが生えているところを見れたり、芽接ぎの仕方を習ったりと、普段の生活ではできないような貴重な経験もさせてもらいました。
 
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また、その場で育っている果物を剥いて食べさせてもらえるのも、農場ならでは。
ブラジルでは、ゴヤバが非常に人気があるらしく、むしゃむしゃと食べていたので、私もまねして齧ってみました。
 
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***
 
さて、3日間の滞在中、ひとつ私にとって大きなイベントがありました。
経済についての話を、ユバ農場の方達に向けてすることになったのです。
ひとりの女性から、あなたの東京やニューヨークでの金融経験をもとに、経済について話して欲しいとお願いされて、私でよければと引き受けましたが、実際に何を話すべきなのか戸惑いました。
 
ここの生活では、お金と言う概念がないからです。
今まで、私がいた資本主義の世界とは全く逆の、共産主義的な人達、しかもどちらかというと、お金を稼ぐことに対してあまり良いイメージを持っていないであろう人を相手に何を話せばいいのか。
 
当日は参加自由なので、旅行者を含め10人ほどの有志の人が集まりました。
「経済と私達の生活」、というテーマで話しましたが、質問がかなり専門的な方向に。
私が仕事としていた、株のトレードの仕方などに関しての質問も飛んできます。
面食らいながら、なんだか予想外だなと思っていると、あることに気付きました。
ここに参加して下さった人は、ユバ農場でも、お金を扱う仕事を受け持つ人達だったのです。
 
ユバ農場には、現在60人弱の人がいます。
個人的なお金は、基本持っていません。
しかし、農場を存続していくにあたり、当たり前ですが、電気がなければいけません。料理をするためには、ガスも必要となります。
農作物を運ぶのには、車やガソリンも必要となりますし、広大な畑を耕すには、トラクターも必要となります。
その為には、栽培した農作物をスーパーに売り、お金を手に入れなければなりません。そして、そのお金について誰かが管理していかなければなりません。
 
やっと、当たり前のことに気付きました。
お金を持たない共産主義的な生活は、確かにひとつの理想系に見えるけれども、だからといってお金や経済について全員が知らないで良い訳ではない。農場の人達の生活を守る為にも、だれかがしっかりと計画し、管理しなければいけない。
今の世の中では、「お金」を避けて通ることは、資本主義だろうが、共産主義だろうが無理なのです。
 
また、このユバ農場が行なっている共産主義は、ふたつの事に恵まれないと、破綻することも分かりました。
まず、お金を管理したり、全てをまとめるリーダーが、道徳心を兼ね備えて、心身潔白な人でなければいけない。
その上で、他の人達が、お金と言う対価がなくても真面目に働く人達でなければいけない。
 
このふたつのことが守られているからこそ、ユバ農場は成り立っています。
多くの共産主義の国が過去に滅びてきたのも、このふたつのうちのどちらか、もしくは両方が崩壊したことに原因があるのでしょう。
 
***
 
日本人は、よく「お金」についての話が嫌いだと言われます。
ユバ農場の方達には、比較的強くこの感情があるようでした。
私は、実はこの日本人的な感覚が好きなのです。
美しいと思っています。
逆に、アメリカ的な資本主義中心のものの考え方は、あまり好意的には受け入れられません。
 
日本人はお金の話が苦手だとか、お金に対して良くないイメージを持っていると言われます。ただ、それを聞いて思うのは、日本人が具体的には何が嫌いで、何を大切にしているのかをしっかりと認識する必要があると思います。
日本人は、決してお金を稼ぐことが嫌いな訳ではない。
実業を行なわないでお金を儲けること、
そして資本が実業を伴わない形で資本を生み出すこと、
このふたつがあまり好きではないのだろうと思います。
 
今、世界はアメリカ的資本主義、しかも株主資本主義が中心となっています。
確かに、アメリカ的資本主義は、多くの商品やサービスを生み出し、人々の生活を便利にしてきました。
しかし、便利になることと、幸せになることは、必ず相関しているとは言えません。
また、徐々にアメリカ的資本主義の脆い点や危うさも見えてきています。
社会や人々の人生をより良くしていく為にも、新しい概念や経済・会社の形が生まれてこないといけない。
そして、これからの新しい社会や経済の理想的な形を生み出せるのは、この美的感覚を持った日本人なのではないかとも、大袈裟かもしれませんが思っています。
 
***
 
「耕し、祈り、芸術する」を理念としてできたユバ農場。
たった3日の滞在でしたが、多くのことを考えさせてくれました。
素朴で、まっすぐな人達にも出会うことができました。
 
またいつか、この場所を訪れたいと思います。
 
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 - ジャンル, 南アメリカ(South America), 文化と経済(Culture and Economy), 旅で出会った人たち(People), 食(Food)

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