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– Tomo's World Trip in 2015 –

*

中国人の日本への複雑な感情

   

中国にいる間、現地の中国人と話す機会がありました。
2週間の滞在で、15人くらいの20-30歳の中国人と話したでしょうか。
彼らと話している中で気づいたことは、中国人は日本に対して、ふたつの相反する感情を抱えていることです。

 ひとつは、嫌悪感。
これは、普段の生活では、あまり表に出ません。
私が日本人だと言ったところで、北京などの都市部での対応は何も変わりません。

しかし、中国の政治や歴史に対する疑問をぶつけると如実に、日本への嫌悪感が表れてきます。
ホステルで働いている若い男の子に、中国の政治、そして共産党について聞いてみました。それまでは楽しく話していたのですが、政治の話になった瞬間、周りを見渡して、だれかに見られていないか、聞かれていないか、確認しています。
そして、声も一気に小さくなりました。
共産党についてどう思うか聞いたときは、「私たちの生活を支えてくれている政党だ」と答えてくれるのですが、では、国の中でフェイスブックやグーグルが使えないこと、情報統制に対してどう思うかと聞くと、答えに詰まります。
ベトナムが主張する領海と諸島にも最近攻撃したよね?と聞くと、あれ、そこはそもそも中国の領海としか習ってないよ、と言いました。
中国人は日本のことをどう思っているかと聞くと、彼は言葉を選びながら、「複雑だ」と答えてくれました。

 また滞在中、「中国人民抗日戦争記念館」に行きました。
これは日中戦争の悲劇について語ったものです。
この記念館の日本への非難たるや凄まじい。
日中戦争中、どれだけ日本軍が中国人に対して残酷なことをしたのかを延々と述べています。そして出てくるのは、世紀のヒーロー共産党。いかに共産党が中国を守るために奔走し、多くの中国人を助けたかが徒然と続きます。
この記念館を訪れた中国人は、確実に日本に対して憎悪を抱くようになるでしょう。

北京の学生の要領を得ない反応も、抗日記念館も、裏側にあるのは共産党による情報統制。
この情報統制には、どうしても憤りを感じます。
若い中国人が、自分の政党についてなんの非難さえできないでいるのはおかしい。
その裏にあるのは、軍事力を源泉とした恐怖政治。中国の軍隊は、国の軍ではなく、共産党一党の持ち物です。日本で例えれば、自民党が個別に軍を持っているようなもの。

自分の国や歴史を正当化するのは分かりますし、それはどこの国でもそうです。
日本は逆に、愛国心教育が弱いと感じるくらい。なんで、そんなに簡単に自分の国を非難できるのか、文句ばかり言うのかいつも不思議に思います。
それでも言論の自由が守られていること、そして、自分の国以外の主張も自由に聞けること。この事実は大事です。

それが中国にはない。
情報は、共産党に都合の良いことしか手に入れることができない。

そして、共産党の情報統制と反日教育の末に生み出されてきたものが、日本に対する憎悪・嫌悪感です。
情報を総合的に見た後に中国人に恨まれるのならまだ道理が分かりますが、根拠があるかないか分からないような情報で恨まれるのは、どうも納得がいきません。

しかし、もうひとつ、日本に対する感情があります。
憧れです。
そして、これは主に日本のハード・ソフトカルチャーによるものです。
特に、日本のソフトカルチャーに影響されている若者がどれほど多いことか。
私が宿泊した北京のホステルには、ワンピースの漫画の絵が壁に描かれていますし、ドラえもんンのTシャツを着た家族を街中で見かけます。
泊まったホステルで一緒になった女の子たちは、携帯で日本のアニメを見ていました。

私がひとりで夜、本を読んでいると、中国人の大学生が寄ってきては、話そうよと言ってくれます。そして、日本の文化のことをどんどんと聞いてきます。
ある20代後半の同世代の男性は、日本に行ったことがないのにも関わらず、夏目漱石や川端康成などの日本の純文学を読み込んでいて、今読んでいるのは、司馬遼太郎だと言っていました。
こういった話をしているときは、みんな日本のことが好きでたまらないといった顔をしてくれます。

 ***

嫌悪感と憧れ。

中国人は、特に今の若い人たちは、日本に対してこのふたつの相反する感情を心の中に持っています。
嫌悪感は、中国内の反日教育から。
憧れは、日本のハード・ソフトカルチャーから。

 私なりに、日本と中国のこれからについて、思うことを書きます。

共産党が生み出した、中国人の中にある日本への嫌悪感は、日本の側から簡単にぬぐうことはできないでしょう。
共産党の過去について調べていると、悲しいかな、今のこの世の中でも、軍事力は圧倒的な影響力と強制力を持つことに気が付きます。これにより国内での絶対的な存在であり続け、周辺国も震え上がらせるようになってきた。

加えて、爆発的なスピードで経済力もつけてきています。
軍需力と経済力を両輪として、中国は世界でも無視できない存在になり、中国を抜きにしては世界が成り立たなくなってきている。自国の力を共産党も理解していて、優位に対外関係を構築しようとしている。
日本の政治家に期待しています。

 

では、民間人として何ができるのか。
私は、特にソフトカルチャーに注目しています。
日本のソフトカルチャーは、中国だけでなく、世界中の人を虜にする力があります。

しかし、今はそれが垂れ流し状態。
これを、まずはきちんと収益化する必要があります。

収益化とは、単にお金を稼ぐことではありません。
仕組みを作り出すことです。
収益を生み出す構造を作ることができれば、才能のある人たちが、偶発的ではなく、必然的に集まってきます。そうなればレベルの高い作品が作られ、世界中で視聴され、影響を受けた人がさらに世界中から集まり、このサイクルを通してひとつの産業が出来上がる。
日本のソフトカルチャーには、ハリウッドを超える力を持っているものが多分にあるんじゃないでしょうか。
この産業に自分が将来関わるかどうかは分からないですが、大きな興味を持って追っていきたいと思います。

 

複雑な国、中国。
世界一周の最後に、見れて良かった。

 - アジア(Asia), 文化と経済(Culture and Economy)

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