スペインの芸術家たち:ピカソ、ミロ、ガウディ
スペインは、著名な芸術家を数多く輩出しています。
画家でいえば、ピカソ・ミロ・ダリ・エルグレコ・ゴヤ、建築家はガウディ。
そのような理由もあって、彼らの作品を中心に充実した美術館が多い。
マドリッドにあるプラド美術館は、世界三大美術館に数えられることもよくありますし、バルセロナには、ピカソやミロの個人美術館があります。
しかも、世界でおそらく最も有名な教会のひとつであろう、サクラダファミリアも、バルセロナにあります。
ということで、とりあえず、スペインでは、フランス以上に美術館や建築物を回ることにしました。
芸術については私は詳しくありませんが、芸術について考えさせてもらうきっかけになりました。
たとえば、ピカソ。
彼の作品を見ると、おそらく多くの人がこのように思うと思います。
「ピカソの絵は本当にすごいの??子供や、誰にでも書けるんじゃないの。」
これに関しては、私のような素人にも分かりやすい解説を書いてくれている本があります。
「ピカソは本当に偉いのか?」(西岡文彦著)
ざっくりまとめると、
まず、彼の絵画の技術についていえば驚異的とのこと。これは、絵を勉強すればするほど分かるらしい。実際、私自身もピカソ美術館で、ピカソの10代の絵を見て、驚きました。晩年の画家が描いたと言われてもおかしくない絵です。なので、子供や誰にでも書けるわけではないということになります。
彼はその技術を武器に、若いころから「画商」と組んで、名声を確立しました。「画商」が絵を売るのに重要な役割だと知っていたのがミソです。ゴッホと違い、ピカソが若い頃から評価されたのは、絵を描くだけではなく、このようなビジネスの才覚もあったからでしょう。絵画というものの裏側には、実は経済原理や人間の欲望、時代の潮流といったものが、大きく働いています。
しかし、それと同時に、ピカソは、現状に満足せず、絵画の常識を覆すような絵も発表します。代表作が、「アヴィニョンの娘たち」。しかも、それは発表当時、ほとんど否定的な評価が下されるにも関わらずです。
結局、この絵は、数十年の時を経て、ニューヨーク市近代美術館(MOMA)に飾られることになりました。
さて、ピカソの絵は本当にすごいのか?
従来の既成概念を打ち崩すことを”美しい”とするならば、ピカソの絵は、革新的な自己表現を追求したという面で、すごいことと評価されます。しかし、現状維持を良しとする人には、ピカソの絵は苛立たしい感覚を招き、偉大ではないということになります。
現在の美術の審査基準は、従来のものを覆す「前衛」的なものをよしとしているので、現代の美術の世界では、ピカソの絵は評価されています。フランス革命であったり、革新的なものを良しとするアメリカが世界の権力を握っている背景もあるのでしょう。
ですが、結局は、ピカソが偉大な芸術家かどうかを判断するのは、最終的には各々の価値観によるということです。
個人的見解ですが、日本人は、ピカソの絵がよくわからない、という意見が多いのではないでしょうか。それよりも、ルノワールの優しさのある絵の方に惹かれやすい。これは、日本人の伝統やしきたりを大事にする保守的な国民性が、ルノワールのような絵にあっているからだと思います。逆を考えると、アメリカ人がピカソを好む理由も、彼らの歴史や国民性が背景にあるのでしょう。
また、この本には書いていませんが、絵画の専門家がピカソの絵に悪い評価を下しにくいのは、ピカソの絵の奥底に技術があるからです。ピカソの絵を評価できないことは、その絵の技術を理解できないことと捉えられる可能性もあります。ピカソもその点をよく熟知していました。
しかし、同じくスペイン出身の画家ミロは、ピカソを尊敬しながらも、ピカソの、技術をバックボーンに絵を売り出すやり方を真っ向から否定しているのが、これまた興味深いところです。ミロは、本物の芸術とは、技術とは関係ないという考え方の持ち主でした。
下はミロ美術館でコーヒーを飲んでいた時の、ミロの絵が描かれているシュガーです。
話は、あらぬ方向にいきましたが、なんにせよ、私にとって、芸術とは何かを考えさせてくれるきっかけに、ヨーロッパの美術館周遊はなっています。
***
また、大学までは理系を専攻してきた人間として、ゾクゾク来たのがガウディの建築でした。
彼が設計した家である「カサ・バトリョ」。
確かに、見た目にも美しいのですが、それ以上にガウディの作品は触れると魅力を感じます。手すりなどを持つと、本当に手にしっくりくるのです。これは、彼が人間工学にも精通していたのだなと思わせてくれます。

また、光の使い方。
光に重点を置いた建築物という意味では、メキシコのルイス・バラガン邸も素晴らしかったのですが、ガウディもすごい。夕陽が差し込むサクラダファミリアは、光が作る荘厳とした美しさに満ちていました。
芸術や美術に触れる。
実際に自分の眼で見る。
どこかでこの経験が、生きれば嬉しいですね。
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