砂漠と死
モロッコで2泊3日の砂漠ツアーに参加してきました。
ツアーと言っても、参加者は私ひとり。
朝の8時にマラケシュを出て、12時間を超えるバス旅の末、夜の9時にメルズーガという、砂漠の隣街に到着。
着いて夕食を食べてから、夜の砂漠をラクダに乗って歩き、砂漠でまずは一泊という計画です。
夕食後、言葉もあまり伝わらない状況で、ラクダ使いに導かれるように夜の闇の中に入っていきます。
あたりは真っ暗。
右も左も全く見えない。
見えるものは、目の前にいるラクダとラクダ使いだけ。
夜というものの怖さを、痛いほど実感します。
ああ、彼を見失ったら、僕はきっと死ぬんだな。
その恐怖に駆られて、必死でついていくだけ。
さらに、この日は運が悪いことに、風がすさまじい。
砂漠からの砂が頬や顔に当たり、目もうまく開けられません。
耳にも鼻にも、砂が紛れ込んできます。
途中で、ラクダ使いの合図でラクダに乗り、砂漠の中に入っていきますが、風で目が開けられないため、どこに向かっているのか想像がつきません。
それでも、薄目をあけながら、なんとか目で追い、前にいることを確認し続けます。
しばらく歩いて、ラクダ使いが、今日はやめよう、風が強すぎる、
という内容のことを言いました。
これ以上、この闇の中を歩き続けるのは、怖くて仕方がなかった。
宿泊先に戻り、その日は眠ることに。
***
次の日の朝早く起きて、ラクダに乗って、目的地に向かいます。
相変わらず、強い風。
しかし、しっかりターバンも巻いてもらったので、今日は耳や鼻に入る砂は防げます。
しかも、太陽が照っている。
砂漠が見える。
昨晩と同じ道を歩いているはずなのですが、明るいというだけで、こんなにも心は安らぐものなのか。太陽とは、こんなにも有難いものなのか。
2時間ほどラクダに乗って、目的地のテントに到着しました。
本来であれば、ここからブラックデザートという、岩の大地に行くはずなのですが、天候により、これも取りやめ。
砂漠の真ん中で一泊することを決めます。
テントの中では、特にすることもなく、宿泊先に置いてあった本を借りてきていたので、それを読んでいました。宮本輝さんの「三十光年の星たち」。
上下巻を読み終わると、夕方。
少し風も収まってきたし、外にでてみようということで、1人で砂漠を歩いてみます。
ここまでは、ほとんどラクダに乗って来たので気づかなかったのですが、自分の足で歩くと、どれだけ砂漠は歩きにくいのか思い知らされます。
砂に足がとられて進まない。
10メートル進むのに、四苦八苦。
それでも、汗だくになりながら、近くの砂丘の頂上を目指して進み、上がったと思った瞬間、信じられないような強い風が、目の前から砂とともに吹いてきました。
立つので精いっぱい。
すぐに、風を避難するため、砂丘の裏側に腰を下ろし、周りの景色を眺めました。
辺り一面、砂漠。
ここは、死と隣り合わせの場所だな。
そう思った瞬間、ああ、生きているなぁ、と。
生きていることが素晴らしいとか、生かしてくれて有難うとか、そういうことではなく、
ただ、生きているのだなぁと。
正直、体は砂まみれだし、シャワーもテントにはもちろんないし、トイレは青空トイレだし、体もきたないまま寝るし、快適なことなんか何もない。
しかも、今回は風が強く、星空なんて全く見えなかったし、食べ物にも砂が混じって、食べてみるとがりがりいう。
すぐにでも帰りたい。
1-2泊以上は、体が持ちません。
でも、旅人は、アフリカを旅するとまたこの地に戻ってきたいと言うのだ、どこかで読んだ本に書いてありました。
私は、砂漠に少し足を踏み入れただけ、
それでも、少しこの言葉の意味が分かる気がします。
生と死は、常に近くにある。
そして、大地とともに、自分は生きている。
そのことをアフリカは実感させてくれるのでしょう。
テントの中で、アフリカの音楽を、太鼓と弦楽器で演奏してくれました。
単純な音の振動が、心の琴線に触れてきます。
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